”理想の町”

“理想の町”と名付けた想像の結晶は、わたしにとって幼い頃からの遊びです。
“理想の町”の中ではわたしが災害であり、建設者です。わたしは家々をなぎ倒し、つくり替え、新しく道を引き直します。
町は常にわたしの思い通りに破壊と再生を繰り返す、完璧で乱れのない、美しい異空間でした。

“理想の町”を描く

“理想の町”が絵となって白日の下に晒された時、わたしの純粋な想像は、あるいは暴力であると自覚されました。わたしの意識や無意識の中にある現実を切り貼りして築いた“理想の町”は、想像が現実の引用からは放たれない、事実であることを表現していたのです。
理想のプールで背泳ぎしていたわたしは、自覚した事実に引っ張られて、どぼん、と水の底に沈んでいきました。

水の底から理想の町を見上げて描く

水の底に沈んだわたしは、水面の模様でずたずたに引き裂かれたイメージをすくいあげるように絵を描きました。
一処に集合していたイメージが決壊し、枠のない状態で漂う様子を眺めながら、どうしても新しい枠組みをつくらなければ、と焦っていました。
しかし、それらのイメージは、共闘、分裂、独立を繰り返しながら、それぞれに立ち現れては消えていきました。わたしの目の前で、イメージは動き続けていたように思います。それらを掴んで白日に晒すことは骨の折れる仕事でした。
わたしは、それならば、と動き続けるイメージを固定せず、推移の総体をつくりあげることができないかと考えるようになりました。繋がっては消えていくさまを描きたいと、望むようになったのです。

ーこれらは、その試みです。

© 2014 Yukino Miyata